Re: 獣友高校生の日常( No.103 )

日時: 2018/12/13 20:48
名前: 闇路◆14..oWjUr6

獣友高校生と文化祭4


カーテンを全て閉めきられ、壇上を照らすスポットライトだけが点いた暗い体育館
そこで上演中の西校演劇部による演目がいよいよ佳境に入った

壇上にいるのはただ一人……否、フレンズ化していない動物が一匹だけ

左翼に紫色の腕輪を着けた雄のフンボルトペンギンが、客席に哀愁漂う背中を向けていた

彼が見上げているのは石段の上に設置された一枚のパネル
そのパネルには……吉崎観音デザインのフンボルトペンギンのフレンズが描かれていた

グレープ『……女房を寝取られて早7年。私は身も心もボロボロとなり、ただ死を待つばかりの肉塊と成り果てていた』

ジャパリパークが誇る超高性能動物言語翻訳機《ジャパリンガル》を首元に装着し、大塚芳忠ボイスで淡々と言葉を連ねるグレープ

グレープ『そんな時、君が私の前に舞い降りてくれた……言葉を交わせない、視線も合わない、触れることもできない、共に歳を重ねることすらできない……それでも私は君の側に居たかった、今の私にとって君の存在だけが生きる希望だったから』

グレープ『でも、とうとう限界が来たようだ。自分の身体の事だから手に取るように分かる……私はもうすぐ死ぬ』

グレープ『君と過ごした半年間は決して長くはなかったけれど、これまでの鳥生で一番楽しかった。私が生きてきた中で最も充実し、心が満たされた日々だった』

グレープ『……届かないのは分かっているが、それでも最後に君に伝えたい』


グレープ『ありがとう、私の側に居てくれて……本当に………ありがとう───』


物言わぬパネルに感謝の言葉を贈ると、グレープは力尽きた様にゆっくりとその場に倒れ伏す